女性の管理職

おまけに、成子に資料づくりを頼んだ男性は次々と別のポストへ栄転していくが、自分にはなかなか異動の話はこない。二十世紀が終わってから何十年もたつのに女性の管理職がさほど増えないのには、理由があった。九○年代、日本の大手企業は、厳しい経済環境の中で社員のすべてを「正社員」として抱え込むことに限界を感じ、社員の選別と振るい落としを強め始めた。いわゆる「リストラ」である。しかし、終身雇用の恩恵をフルに受ける層が決定権を握っていたため、完全にこのシステムを捨てるわけにもいかず、二○○○年に入ると、三○代以降の男性社員を「基幹社員コース」と「自己開発コース」に分ける人事制度を採用した。三分の一程度は幹部候補として、一応の終身雇用を保障し、昇格につれて賃金が年々上昇する「基幹社員」にする。残りは「自己開発コース」に回されるが、賃金は抑えられ、昇格も昇給もない。嫌なら、いったん会社から外れ、実績を見ながら一年ごとに契約を更新する契約社員の道か、独立するかだ。選別が厳しくなれば、いい人材が引き上げられると思われがちだが、評価の方法が相変わらずの印象批評だから、結局「やる気のある感じがする人」や「上司のウケのいい人」が基幹コースに行くことになる。個々の社員のしている仕事をひとつひとつ洗い出し、それぞれについて、社員側の反論を聞きながら評定する職務の評価ではなく、人間のムードで評定する限り、そうした結果になる、と成子はクールに見ていた。

参考:「」

DY053_L

Comments are closed.